「眠りはなぜ必要か」シリーズ ④ いびき
大人のいびきと無呼吸
いびきは、睡眠中に喉の筋肉が緩み、空気の通り道(上気道)が狭くなり、空気の流れが妨げられることで、粘膜が振動して発生する音です。
いびきの主な原因(複数が重なることが多い):
- 肥満: 首周りに脂肪がつくと、喉の内側が圧迫されて気道が狭くなる。
- 飲酒・睡眠薬: 筋肉をリラックスさせる作用(弛緩作用)により、舌が喉の奥へ沈下しやすくなる。
- 疲労・ストレス: 疲労が溜まると筋肉が通常より緩み、気道が狭くなりがち。
- 睡眠不足: 筋肉がより緩みやすくなる。
- 加齢: 筋緊張の低下で気道が狭くなる。
- 骨格: 日本人は顎が小さく下顎が後方に引っ込んでいるため、舌が気道を塞ぎやすい傾向がある。
- 解剖学的要因: 長い軟口蓋・大きな扁桃・アデノイド・舌が大きいなど。
- 寝姿勢: 仰向けで寝ると、重力で舌や軟口蓋(喉奥の柔らかい部分)が沈下し、気道を塞ぎやすい。
- 鼻の疾患: 鼻づまり(アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎・鼻中隔湾曲など)で口呼吸になると、喉が乾き、振動が起きやすくなる。
いびきの対策・改善方法
- 横向きで寝る: 仰向けで寝るよりも気道が確保されやすい。ただし、横向きで改善するのは、肥満度が20%以下程度で過度の肥満のない人。
- 減量: 首周りの脂肪を減らす。
- 枕の調整: 高すぎる枕は気道を圧迫するため、適切な高さの枕を使用。
- 飲酒を控える: 特に寝る前の飲酒は避ける。
- 鼻詰まりの治療: 鼻炎や鼻詰まりを改善する。
注意が必要な「危険ないびき」
以下がある場合は、睡眠時無呼吸症候群(SAS, Sleep Apnea Syndrome)の可能性があります。
- いびきが大きく、途切れる
- 無呼吸(呼吸が止まる)を家族に指摘される
- 日中の強い眠気・集中力低下・記憶力の低下・意欲低下
- 夜間2回以上のトイレ
- 熟睡感のなく、起床時の疲労や頭痛
これは睡眠中に気道が塞がることで無呼吸(低酸素)状態を引き起こし、脳が危機を察知して「早く呼吸を再開させ、血圧を上げて脳に血液を送れ」と交感神経を活性化させることで、本来は休むべき夜間に覚醒状態を繰り返すことになります。そして様々なトラブルやリスクを招く原因となります(図1)。
図1. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)によって起こる主なトラブルやリスク(参考1より筆者改変)

子どものいびき 発育などに悪影響も
子供がいびきをかいて眠っているときに、そっとパジャマの前を開いて、胸の動きを観察してみてください。いびきに伴って、胸がへこんでいるようであれば要注意です。
子どものいびきの原因はほとんどが、扁桃肥大です。口を開けると、喉ちんこの横に大きく肥大した口蓋扁桃がみえ、喉ちんこの後ろ上には、アデノイドという咽頭扁桃があります。アデノイドと口蓋扁桃がある程度以上の大きさになると鼻詰まりが生じます。子どもは鼻が詰まっていても、覚醒時には口を開けて呼吸をします。しかし、眠っているときには、無意識に詰まった鼻で呼吸しようとするために、いびきとなったり、呼吸がとまる(無呼吸)ようになります。
鼻風邪などによる短期間のいびきは、それほど問題ではありませんが、数か月以上、一晩中にわたる大きな苦しそうないびきが続くようなら、よく調べる必要があります。
狭くなった気道を通して呼吸すると、胸がへこみます。毎晩のように胸がへこむような苦しい呼吸をしていると、胸の中央部がへこんだり(漏斗胸)、突出したり(はと胸)するなど変形します。いびきや無呼吸、胸の変形、口呼吸などを認めたときには、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。
また、いびきがひどくなると、生活リズムの障害としても現れます。目覚めが遅く、2~3時間以上の長い昼寝、一晩中にわたるいびき、夜中に何度も目を覚ましたり、夜尿(おねしょ)などの症状が出ます。
落ち着きがない、すぐに怒りやすいなど、軽度の注意欠陥・多動性障害(ADHD, Attention Deficit Hyperactivity Disorder)に似た症状を呈します。重症例では、成長ホルモンの分泌が障害され、体の発育が停滞することもあります。5~6歳頃までに治療することが大切です。
参考資料:
- 日本睡眠総合検診協会 集団検診
- 睡眠健康大学 附属病院講義リスト
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
久住静代(くすみしずよ)プロフィール:
東京の赤坂おだやかクリニック名誉院長。抗加齢医学専門医として、人生120年時代、いかに老化のスピードを遅くして、生涯、自立して健康に心豊かに生きるかという課題に取り組んでいます。