2021年のWHOのデータによれば、日本人の平均寿命は84.3歳で長寿世界一です。しかしながら、健康寿命(健康上の問題で日常生活に制限を受けることなく生活ができる期間)をみると、平均寿命と健康寿命の差は9.3年で、世界131か国中60位です。長生きの中身が大切です。
今回は、生涯健康で活き活きと輝き、心豊かに暮らすために、ブルーゾーン(Blue Zones)で100歳を超えてなお活動的に楽しく暮らす長寿者たち(以下、”百歳人”と呼びます)に共通する法則(ルール)、どんな暮らし方が健康長寿を導くのかについて考えましょう。そして、できることから少しづつ取り入れてみませんか。
「ブルーゾーン」とは、100歳以上の長寿者が多く暮らす地域を指す言葉です。世界には5つの代表的なブルーゾーン(図1)があり、その特徴は単に長生きする人が多いだけでなく、”健康で活動的な100歳以上の人々が多く存在する”ことです。

図1 世界の5つのブルーゾーンとその特徴 (筆者作成)
◆ ブルーゾーンから導き出された9つの法則(ルール)
[ルール1] 適度な運動を続ける
長寿をまっとうしている人たちの日常生活には、あまり激しくない運動が組み込まれている。サルデーニャのブルーゾーンに住む男性は人生の大半を羊飼いとして過ごし、歩く距離は毎日、数キロに及んでいる。沖縄の人たちは、自分たちの食卓に乗せる野菜を育てるため、毎日、数時間は畑仕事をする。
日常生活のなかで体を動かすことが少ない多くの現代人は、意図的に毎日運動をする必要がある。有酸素運動とバランス運動、それに筋力トレーニングをミックスしたものが望ましい。目標は、少なくとも30分間(理想的には60分間)の運動を週5回することを習慣とすることである。
適度な運動を習慣化するために:
① 身の回りを不便にする
生活をいくらか不便にする、例えばリモコンを使わないなどによって、日々の運動量を簡単に増やすことができる。
② 毎日を活動的に楽しむ
“運動のための運動“をするよりも、車を使う代わりに自転車に乗る、買いものには歩いて行くなど。ライフスタイルを活動的にする。
③ 草花を植える
畑仕事は激しくはないが、あらゆる動きが必要になる。さらに季節ごとの収穫がある。
[ルール2] 腹八分で摂取カロリーを抑える
動物実験により、カロリー制限で寿命が延びることが判明している。カロリー制限のメリットは、フリーラジカル(*1)による細胞の崩壊を制限することにあるようだ。アメリカ人の多くが満腹感を得るまで食べ続けるのに対して、沖縄の人たちは空腹感がなくなった時点で食べることをやめる。
(*1) フリーラジカル:電子は通常ペア(対)で存在するが、フリーラジカルはペアになっていない電子(不対電子)を持っているために、他の分子から電子を奪う働き(酸化)が非常に強く、DNAや細胞膜などを傷つける。このため体内で過剰に発生すると、老化や病気になったりする。しかし、病原菌などを退治する役割も果たす。
腹八分目を習慣化するために:
①取り分けたら料理は片づける
キッチンでお皿に料理を取り分け、料理は片づけてしまおう。おかわりする場合より、14パーセントほど食べる量が減ることが実証されている。腹八分目にちょうどいい量を取り分けることを学んでいこう。
②食事を大きく見せる工夫をする
100gのハンバーガーにレタスやトマト、玉ねぎをを加えてボリューム感を出せば、200gのハンバーガーを食べたのと同じ満腹感を得られる。
③おやつは見えないところに
④毎日、体重計に乗る
⑤ゆっくりと食事に専念して食べる
早食いは大食につながる。食べるペースを落とせば、空腹ではない合図を感じ取る時間が得られる。
⑥食事は早い時間帯に
ブルーゾーン地域の人たちの多くは、午後遅くか夕方早くに一日で最も軽い食事を取る。
[ルール3] 植物性食品を食べる
長寿者に適した食事には、豆類、全粒の穀類、家庭菜園の野菜が欠かせない。サルデーニャの羊飼いたちは、セモリナ小麦で焼いた平たいパンを牧場へ持っていく。ニコジャの人たちは、食事にトウモロコシを原料にしたトルティージャを食べる。そして、ロマリンダのアドベンティスト(*2)たちは食事ごとに全粒の穀類を欠かさない。ブルーゾーンの食事では、豆類も重要な役目を果たしている。
最近行なわれたセブンスデー・アドベンティストの大規模調査によって、ナッツ(1日約50g)を週5回以上食べていた人たちが心臓疾患にかかる割合は、ナッツをほとんど食べていない人たちの半分、という事実が判明した。ナッツが血中コレステロールレベルを下げることで心臓を守る可能性がある。
(*2) ロマリンダのアドベンティスト:アメリカのカリフォルニア州にあるロマリンダ大学に端を発する、セブンスデー・アドベンティスト教会のグループ。ロマリンダ(スペイン語で「美しい丘」)大学は、この教会が運営している。「セブンスデー」(第七日)の安息日(土曜日)を守り、「アドベンティスト」(キリストの再臨を待望)するという、聖書主義に立つプロテスタント教会の教派。
健康な食生活を習慣化するために:
① 毎日4~6種類の野菜を食べる
② 肉類は制限する
③ 豆類を食卓の主役に
[ルール4] 適度に赤ワインを飲む
健康のためにワインを飲むなら、1日に赤ワインをグラスに1杯か2杯。赤ワインは動脈を浄化するポリフェノールを含んでおり、動脈硬化を防ぐ可能性がある。ブルーゾーンのデータは、継続と節度が重要であることを示している。逆に飲み過ぎれば健康を台なしにしてしまう。
[ルール5] はっきりした目的意識を持つ
沖縄の人たちは、「生き甲斐」と呼び、ニコジャの人たちは「人生の目標(プラン・デ・ビーダ)」と呼んでいるが、どちらの文化でも本質は「朝、目覚める理由」と置き換えられる。生き甲斐を持つ沖縄の老人は行動的で、それがアルツハイマー病や関節炎、脳卒中などを減らすことに貢献している。
自分の目的をはっきりさせ、生き甲斐を感じるために:
① 自分の目標宣言を書く
自分の目標をきちんと宣言する。次の問いに、記憶できるような簡潔な文章で答えることから始めよう。
・毎朝、なぜ目覚めるのか?
・自分は何に夢中になれるだろう?
・自分の能力が発揮できることを楽しんでいるだろうか?
・自分にとって本当に大事なことは何だろう?
② パートナーを見つける
自らの人生の目標を見つけ、それを実現する計画を話せる相手を探そう。自分の計画とその成功を率直に評価し、はげましてくれる人であれば、友だちでも家族でも、配偶者や同僚でもいい。
③ 新しいことを学ぶ
楽器の演奏でもいいし、新しい外国語でもいい。どちらも頭脳の鋭敏さを保つために役立つ、きわめて効果的な方法として知られている。
[ルール6] 人生をスローダウンする
ニコジャの人たちは、毎日、午後には休憩時間を取って、友人たちと交流する。サルデーニャのアルザナ村で、ある日の午後、107歳の女性に、107歳まで生きてきて若い人たちに言いたいことはあるかと尋ねると、彼女は目をきらきらと輝かせて、「もちろん」と、即座に答えた。 「人生は短いものよ。あんまり急ぐと見逃してしまうわよ。」
人生をスローダウンするために:
1.電子機器を使う時間を減らす
2.目的地には早めに着くようにする
3.瞑想する
瞑想は、あるがままの世界を見ることができるようになり、日常生活の様々なことに急いで取り組むことがそれほど重要でないことに気づかせてくれる。
[ルール7] 信仰心を持つ
どの国でも、健康な百歳人は信仰心を持っている。崇拝するという素朴な行為は、健康な年月を長引かせてくれる大きな力を持つ習慣だ。宗派は関係ない。少なくとも月に1度は宗教的な行事に参加していた人は、死に至るリスクを1/3に減らしたという7年半にわたる追跡調査がある。宗教的なコミュニティに所属することで、より大きなもの、より密度の高いネットワークに組み込まれることになる。
[ルール8] 家族を最優先にする
ブルーゾーンで出会った幸せな百歳人たちは、家族を最も大事にしていた。彼らは結婚し、子どもをもうけ、それを核に生活を築いていた。彼らの生活は、家族への義務や家族の儀式を優先し、家族がともにいることを強く求めるなど、家族を軸にした生活だった。
この特徴は特にサルデーニャで顕著。ニコジャでは、大家族で住む傾向がある。調査によれば、子供世代と住む高齢者は病気にかかりにくく、より健康的な食事をしており、ストレスは少なく、重大な事故にあう危険性もかなり低い。
今や世界は、反対の方向に向かっている。両親が共働きで子供たちもスケジュールが詰まっていて、家族としてまとまる時間が少なくなっている。この流れを押しとどめるには、家族の全世代が一緒に過ごす方策をともに真剣に考えることだ。
家族を最優先するために:
① 家族の距離を近くする
子供たちや配偶者、両親に対して時間とエネルギーを注ごう。
② 家族の儀式を作る
家族そろっての休暇を年中行事したり、例えば火曜日の夕食は祖父母と一緒に食べるなど。
③ 家族の祭壇を作る
[ルール9] 人とつながる
おそらくこれがライフスタイルを改善するうえで最も強力なポイントである。ブルーゾーンでは、社会的つながりが根づいている。沖縄の人たちには模合があり、これは生涯を通じてお互いに寄り添う人たちのグループだ。サルデーニャの人たちは、地元のバーで友だちと語り合い一日を終える。毎年行なうブドウの収穫や村祭りには、コミュニティ全体がこぞって参加する。社会的つながりと長寿を9年あまりかけて分析した結果、社会的つながりの多い人ほど長命であることが分かった。
価値観を共有できる人とつながるために:
① 価値観を共有できる人をリストアップする
誰が健康的な習慣をサポートし、意欲をかき立ててくれるだろうか。そして、誰が必要なときに心から頼りにできるだろうか。
② 人に好かれるようにする
百歳人たちは、愚痴をこぼさない。好かれる老人は社会とのつながりがあり、訪れる人も多く、世話人役でもある。彼らはあまりストレスを感じず、しっかりした目的を持った人生を送っている。
③ 仲間と一緒の時間を作る
少なくとも1日に30分は仲間と過ごすことが望ましい。定期的に一緒に食事すれば、さらにいい。強い絆を築くのは努力が必要だが、やがてたっぷり見返りがくる。毎日、出歩くことにしよう。
参考資料:
1.日本抗加齢医学会会誌2025:8
2.「ブルーゾーン セカンドエディション 世界の100歳人に学ぶ 健康と長寿9つのルール」(祥伝社)
ダン・ビュイトナー著
久住 静代(くすみ しずよ)プロフィール:
東京の赤坂おだやかクリニック名誉院長。抗加齢医学専門医として、人生120年時代、いかに老化のスピードを遅くして、生涯、自立して健康に心豊かに生きるかという課題に取り組んでいます。